LLブックについて

本ページは,LLブックについて,また,小社で刊行しております写真版LLブックについて,企画意図,出版までの経過と特徴、社会的背景をまとめております。

写真版LLブック出版の企画意図
写真版LLブック第1作から第3作出版までの経過と特徴
LLブックについて:社会的背景など

LLマンガへの取り組み(新しいタブが開きます)

 
わたしのかぞく しょえい はつこい 書影 旅行に いこう! 書影
 

写真版LLブック出版の企画意図

私たちは,書籍・雑誌や新聞などの紙媒体,インターネットなどの電子媒体によって,毎日何かを読んで情報を得たり,楽しんだりしています。
読むことは,ごはんを食べることと同じようにあたりまえのことです。
読書は楽しみであり,心を育て,生活を豊かにします。そして,新しい必要な情報を得る大事な行為です。

知的障害や自閉症等により文字が読めない障害児者にとっても,読書を楽しみ,情報を得ることは基本的な人権に関わる保障されるべき事柄です。
しかし,現在の出版物の表現媒体は文字が中心であり,子ども向け以外の本は,内容も表現も複雑で高度です。
これでは,彼らは読むことができません。

彼らにとって,興味のある,知りたいことが書かれている,読みやすく,わかりやすい本や雑誌があれば,読書を楽しむことができます。
そのような本をLLブックという名称で呼んでいます。
LLとはスウェーデン語のLättlästの略で,「やさしく読みやすい」という意味です。

私たち(企画・編集・制作者)は,知的障害や自閉症等の人が楽しめる本を目指して,LLブックの特徴が最も明確に表現できる文字のない写真だけの本づくりに取り組んでいます。
ストーリーの理解が苦手な当事者のために,1編ずつのショートストーリーを楽しむことができる写真版LLブックを目指し,第1作『わたしのかぞく:なにが起こるかな?』を2015年4月に刊行,初版が完売し,重版出来となりました。確かな手応えを得たところで,第2作『はつ恋』を2017年4月,第3作『旅行に いこう!』を2019年8月に刊行しました。
今後も,多様なLLブックの出版・普及活動を継続していく考えです。
 
わたしのかぞく しょえい はつこい 書影 旅行に いこう! 書影
 

写真版LLブック第1作から第3作出版までの経過と特徴

2014年までに,助成金(2011年度日本コミュニケーション障害学会,2013年度伊藤忠記念財団)を受けて,自費出版ベースで『はつ恋』『わたしのかぞく』という2冊の写真版LLブックを制作し,近隣の特別支援学校,障害者施設,公立図書館に寄贈してきました。
また,現在でも電子図書として無料で公開しています。

2015年には,みずほ福祉助成金と樹村房(出版社)の支援を受けて,一般図書として流通し,だれもが購入できる本として第1作『わたしのかぞく:なにが起こるかな?』を出版しました。
本書は,どこにでもいそうで,でもちょっと面白い家族の日常で起こった出来事を集めたコント集で,誰もが親しみやすい内容です。
小学生の少女「わたし」とその両親,おじいさん,お兄さん,お姉さんのそれぞれのエピソード9編を4コママンガ風に表現し,マンガ「サザエさん」のような家族による身近な笑いがいっぱいです。
わたしのかぞく 画像

第2作『はつ恋』は,だれもが憧れる「恋」をテーマにしています。
青年,成人の年齢になると,自然と恋愛への興味が芽生えます。
恋愛小説やエッセイ,詩集などを通して,恋や愛に憧れ,豊かな気持ちになることができます。
しかし,一般図書を読むことができない知的障害の人たちには,そのような機会がほとんどありません。
そこで,写真によって恋愛ストーリーを楽しむことができる写真版LL ブックを制作しました。
憧れる少女とのはつ恋を実らせるために,悪戦苦闘する青年を描いています。
4コママンガの写真版のように起承転結の流れで,オチのあるコントを,1編5~6コマ程度の写真で表現し,出会いからハッピーエンドまで7編で構成しています。
また,本作から,文字が読めなくてもタイトルのイメージがもてるように,ピクトグラムで各編のタイトルを表記しています。
LLブック コンテンツ見本

第3作『旅行に いこう!』は,1泊2日の家族旅行がテーマです。
張り切っているお父さん,食いしん坊なお母さん,ちょっとドジなお兄さん,優しい妹,仲良しのおじいさんとおばあさんが,旅先で繰り広げるエピソードの数々は笑いを誘い,家族みんなのウキウキ,ワクワク感が伝わってきます。
本作も4コママンガ風の展開で,前作から取り入れたピクトグラムも充実しています。
旅行に いこう! 画像

第1作から第3作まで,兵庫県立ピッコロ劇団の制作協力を得て,出演者一人ひとりの動作や表情に気を配りながら質の高い作品を目指しています。 
 

LLブックについて:社会的背景など

LLブックは,北欧を中心に普及しています。
特にスウェーデンでは,1960年代から提唱されたノーマライゼーションの考え方に基づいて,LLブックの制作と出版が開始されました。ノーマライゼーションとは,「障害を持っていても,市民として平等に権利をもち,当たり前に普通の生活が送れる社会を実現する」という理念です。障害があっても,文字が読めなくても,すべての人が読書の機会をもつことは,民主主義や正義,平等思想を実現するために重要な課題であるという認識にたっています。政府は現在まで,知的障害者の読書権を平等に保障するという目的で,出版を先導し,支援してきました。1989年に設立されたLL協会は,政府から運営費の半分にあたる額の助成を受けて,年間30冊のLLブックを出版してきました。
現在は,MTM (MYNDIGHETEN FÖR TILLGÄNGLIGA MEDIER),アクセシブルなメディア機関という国立の官庁がLL協会の業務を引き継ぎ,対象を高齢者や移民,認知症に広げて,年間30冊を出版しています。LL協会から現在までの出版冊数は総数約800冊になります。

一方,日本では,2007年に行った近畿視覚障害者情報サービス研究協議会・LLブック特別研究グループの調査によると,74冊と報告されています。日本でLLブックの冊数,種類が増えない理由は,知的障害者への読書保障について,社会的に関心が低いこと,スウェーデンのように国費による出版支援がないこと,利益があまり期待できないLLブックの出版に出版社が積極的ではないことなどが考えられます。

平成28年度から「障害者差別解消法」が施行され,国や自治体には,差別を解消するための合理的配慮が義務づけられました。そのため,公立図書館や公立学校図書館では,障害に配慮した読みやすいLL ブックが必要とされています。
写真版LL ブックが好評を得ていることを機に,今後,様々なジャンルで多くのLL ブックが出版され,文字が十分に読めない人たちも,読書を楽しめる日が来ることを望んでいます。
 
(文責・藤澤和子)

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